Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

Lisez 春いくたび (はるいくたび) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 70 094 caractères · 142 écrans

Aozora Bunko

春いくたび

一

一

霧のふかい早春のある朝、旅支度をした一人の少年が、高原の道をいそぎ足で里の方へと下って来た。……年は十八より多くはあるまい、意志の強そうな唇許と、睫のながい、瞠いたような眼を持っている、体はがっちりとしては見えるが、まだどこやら骨細なので腰に差した大小や、背に括りつけた旅嚢が重たげである。

道は桑畑のあいだを緩い勾配で下って行く、桑の木はまだ裸であるが、もう間もなく芽をふくのだろう、水気を含んだ枝々の尖は柔らかくふくらんで、青みのさした樹皮には、霧の微粒子が美しく珠を綴っていた。

少年はときどき立止りながら道を急いだ。

もうすっかり明けはなれているのだが、あたりは灰白色の霧に包まれてなにも見えない。……山の上から吹き下りて来る霧は、少年の体を取巻いて縦横に渦を巻き、押返したり揺れあがったりしながら下の方へと去って行く。……それはまるで音のない激流のなかにいるような感じだった。道が二つに岐れるところへ来た。少年は其処で足を止めた。……そしてなにかを聞き取ろうとでもするように耳を澄ませた。……元服して間もないと思われる額に、濡れた髪毛が二筋三筋ふりかかっている。