Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

Lisez 春いくたび (はるいくたび) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 70 094 caractères · 142 écrans

Aozora Bunko

武道宵節句

一

一

――飢えて窮死するとも、金一両はかならず肌に着けおくべし。武士の嗜なり。

父は生前よくそういっていた。三樹八郎はいま、金一両と四、五枚の銭を手にして、父の言葉を思出しながら我知らず太息をついた。

――渇しても盗泉の水は汲まず、貧にして餓死するはむしろ武士の本懐なり。

これも父の言葉である、だからこの家では、どんな困ったことがあっても、太息をつくなどということはかつてなかった。――厨でことこと俎の音をさせていた妹の加代は、珍しい兄の太息を聞いて、

「お兄さま、どうか遊ばしまして?」

と声をかけた。

「うん? いやなんでもない、腹が空いたので御馳走を待兼ねているところだ」

「まあいや、……この膾ができるとすぐですわ、もうしばらく我慢をあそばせ」

「ではお雛様へ燈でもあげるか」

三樹八郎は金を納って立上った。ひどい貧乏の中にたった一組だけ残った内裏雛と、橘、桜、雪洞が二つという、淋しい雛壇に燈を入れる、――昔を思うと夢のようだ。七百石御槍奉行まで勤めた家柄とて、十五畳の間を半ば占めた豪華な雛壇、近親知友を集めて宵節句を祝った当時に比べると、本当に夢のような変りようである。