Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(五) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 252 330 caractères · 505 écrans
「さて、どうしているぞ? どうなることか?」
と、早馬のひづめに、胸の明け暮れ、かきたてられていたことにちがいない。
鎌倉には、妻の登子を残していた。また、新田軍のうちには、嫡男の千寿王を、あえて参陣させてある。
――で彼は、先に、千寿王の鎌倉攻め参加が首尾よくおこなわれたと聞くやいな、家臣細川和氏に、旨をふくませて、
「もうここはよい。ここは一トかたづきした。おぬしは急遽、鎌倉へくだって行き、千寿王を補佐してくれい」
と、命じていた。
乳臭のきみの補佐と聞けば、主眼は政治的な意味にあることはあらためて訊くまでもない。細川和氏は、そのてん、高氏が深い意中のものを託すに足る思慮のある人柄だった。和氏は、弟の頼春、師氏と共に、兵三百をひきつれ、即日、海道を下って行った。
美濃。尾張。天龍の渡し……。
海道もひがしへ下るほど、途々、旅人の口々にも、
「東国はたいへんだぞよ」
「わけて鎌倉は」
と、行くところで、新田勢と幕軍との耳新しい戦況を聞く。
細川和氏の一勢は、そんな風説のあらしのうちを、急ぎに急いだ。小夜の中山越えにかかった日である、一人の旅人は、ついに鎌倉も陥ちたと言った。