Classiques japonais avec furigana
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ゆきぐにのはる
雪国の春
柳田 国男
Lisez 雪国の春 (ゆきぐにのはる) de 柳田 国男 (やなぎたくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 136 000 caractères · 266 écrans
その山桜の老木が、ちょうど私の訪ねた日には、真青な空の下にちらちらと散っていた。真山の五社殿を後ろに廻ると、わずかな間の草山の登りが特別に急であって、またその対価以上に眺望がよかった。恐らくは将来男鹿を訪う者の、必ずきてみなければならぬ場所になるであろう。
山の斜面はほぼ正東に向いている。最初は前に立つ寒風山に隔てられて、ただ想像するだけの八郎潟が、登るにつれて少しずつその両肩の上に光ってくる。それが半腹を過ぎるとほとんど全部、寒風の峰を覆うように見えるのであるが、その見晴らしの最も優れた地点で路を曲げ、曲がり角にはちゃんと桜があるのは、疑うところもなく心あっての設けであった。以前この辺まで一帯の林であったころには、必ずこの花の蔭に息を入れて、振返って始めて三方の海を眺めたことと思う。
本山の若葉山の姿も、やはりこのあたりから見るのが好いように思った。細かに観察したならば、美しい理由ともいうべきものがわかるであろう。山の傾斜と直立する常磐木との角度、これに対する展望者の位置などが、あたかもころ合いになっているのではないか。画をかく人たちに考えてもらいたいと思った。