Classiques japonais avec furigana
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lisez 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 296 741 caractères · 584 écrans
「すると、敷物の波は何のためだい」熊城が横合から訊ねた。
「それが、内惑星軌道半径の縮伸じゃないか。いったん点にまで縮んだものを、今度は波の頂点に博士の頸を合わせて、敷物を旧どおりに伸ばしていったのだ。だから、束を握り締めたままで、博士の死体は室の中央に来てしまったのだよ。勿論、空室でも、鎖されていたのではないから、ほとんど跡は残らぬし、死後はけっして固く握れるものじゃない。けれども、だいたい検屍官なんてものが、秘密の不思議な魅力に、感受性を欠いているからなんだよ」
その時、この殺気に充ちた陰気な室の空気を揺ぶって、古風な経文歌を奏でる、侘しい鐘鳴器の音が響いてきた。法水は先刻尖塔の中に錘舌鐘(錘舌のある振り鐘)は見たけれども、鐘鳴器(鍵盤を押して音調の異なる鐘を叩きピアノ様の作用をするもの)の所在には気がつかなかった。しかし、その異様な対照に気を奪われている矢先だった。それまで肱掛に俯伏していた真斎が必死の努力で、ほとんど杜絶れがちながらも、微かな声を絞り出した。
「嘘だ……算哲様はやはり室の中央で死んでいたのだ……。しかし、この光栄ある一族のために……儂は世間の耳目を怖れて、その現場から取り除いたものがあった……」