Classiques japonais avec furigana
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lisez 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 296 741 caractères · 584 écrans
と乙骨医師は卓子をゴツンと叩いて、彼の知見を強調するのだった。
「いや、純粋の心理病理学さ」法水は暗い顔をして云い返した。「ところで、頸椎は調べたろうね。僕はクインケじゃないが、恐怖と失神は頸椎の痛覚なり――と云うのは至言だと思うよ」
乙骨医師は莨の端をグイと噛み締めたが、むしろ驚いたような表情を泛べて、
「うん僕だって、ヤンレッグの『病的衝動行為について』や、ジャネーの『験触野』ぐらいは読んでいるからね。いかにも、第四頸椎に圧迫がある場合に衝動的吸気を喰うと、横隔膜に痙攣的な収縮が起る。だがしかしだ。その肝腎な傴僂というのは、あの女じゃない。それ以前に、一人亀背病患者が殺されているという話じゃないか」
「ところがねえ」と法水は喘ぎ気味に云った。「無論確実な結論ではない。恐らく廻転椅子の位置や不思議な倍音演奏を考えたら、一顧する価値もあるまいよ。けれども一説として、僕はヒステリー性反覆睡眠に思い当ったのだ。あれを失神の道程に当ててみたいのだよ」
「もっとも法水君、元来僕は非幻想的な動物なんだがね」と乙骨医師は眩惑を払い退けるような表情をして、皮肉に云い返した。