Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

Lisez 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 296 741 caractères · 584 écrans

Aozora Bunko

しかし不思議と云うのは、両側の顳に現われている、紋様状の切り創だった。それがちょうど文身の型取りみたいに、細い尖鋭な針先でスウッと引いたような――表皮だけを巧妙にそいだ擦切創とでもいう浅い傷であって、両側ともほぼ直径一寸ほどの円形を作っていて、その円の周囲には、短い線条が百足の足のような形で群生している。創口には、黄ばんだ血清が滲み出ているのみであるが、そういう更年期婦人の荒れ果てた皮膚に這いずっているものは、凄美などという感じよりかも、むしろ、乾燥びた蟯蟲の死体のようでもあり、また、不気味な鞭毛蟲が排泄する、長い糞便のようにも思われるのだった。そして、その生因が、はたして内部にあるのか外部にあるのか――その推定すら困難なほどに、難解をきわめたものだった。しかし、その凄惨な顕微鏡模様から離れた法水の眼は、期せずして検事の視線と合した。そして、暗黙のうち、ある慄然としたものを語り合わねばならなかった。なんとなれば、その創の形が、まさしく降矢木家の紋章の一部をつくっている、フィレンツェ市章の二十八葉橄欖冠にほかならないからであった。

二十八葉橄欖冠の図