Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

Lisez 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 296 741 caractères · 584 écrans

Aozora Bunko

いずれ判るだろうと思いますが、それが、この際何よりの良策なんですからね」と意味あり気な警告を残して、法水は伸子の室を去った。しかし、その出際に、彼は異様に熱の罩もった眼で、扉並びの右手の羽目に視線を落した。そこには、彼が入りしなすでに発見したことであったが、扉から三尺ほど離れている所に、木理の剥離片が突き出ていて、それに、黝ずんだ衣服の繊維らしいものが引っ掛っていたからだ。ところで読者諸君は、ダンネベルグの着衣の右肩に、一個所鉤裂きがあったのを記憶されるだろうが、それにはまた、容易に解き得ない疑義が潜んでいるのだった。何故なら、常態の様々に想像される姿勢で入ったものなら、当然三尺の距離を横に動いて、その剥離片に右肩を触れる道理がないからである。

それから法水は、暗い静かな廊下を一人で歩いて行った。その中途で、彼は立ち止って窓を明け、外気の中へ大きく呼吸を吐いた。それは、非常に深みのある静観だった。空のどこかに月があると見えて、薄っすらした光が、展望塔や城壁や、それを繁り覆うているかのように見える、闊葉樹の樹々に降り注ぎ、まるで眼前一帯が海の底のように蒼く淀んでいる。