Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

Lisez あさひの鎧 (あさひのよろい) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 239 520 caractères · 475 écrans

Aozora Bunko

藤原保藤卿の御女、南の方お一人だけが御傍らに侍っていた。

お世話申し上げているのである。

朝権恢復、建武の中興、それは完全にご遂行あそばされた。

宮方の柱石は申すも愚か、日本全体の柱石として、最近まで宮家はおわしたのである。

しかるに尊氏、直義、二個の奸臣の憎むべき陰謀によって、土牢の中へご幽閉という、凄惨たる境遇にお落ちあそばされた。

その御思いは?

宮家の御心は?

説明するにも及ぶまい。

土牢の中は湿気に充ち、御呼吸さえお苦しそうであった。

暁のほのかな薄明りが、紫陽花色に格子づくりの、出入り口のあなたに隙けて見えたが、読経に余念のない宮家には、まだお気づきにならないようであった。

と、その格子戸が外から開いて、甲胄武者が一人はいって来た。

宮家は屹とご覧になられた。

直義の家臣、逆臣の走狗、淵部伊賀守義博であった。

宮家は一切をお悟りになられた。

「この身失わんのお使いであろうな! 心得たり!」

と仰せになり、宮家はスックとお立ちになられた。

が、いかんせん長い月日の、土牢ご幽居の御体は、勇猛の御力を消耗しおられた。

宮家の御首級を両手に捧げ、淵部義博が土牢から出た時、まだ暁は紫陽花色であった。