Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

Lisez あさひの鎧 (あさひのよろい) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 239 520 caractères · 475 écrans

Aozora Bunko

写経の桂子

それだのに今夜は火がともっている。

(変だねえ)

と桂子は思った。

(では猟師が入りこんだのかしら?)

そう思えば何んでもなかったが、何んでもなくない証拠には桂子の心が、その火にともすれば乱されることであった。

桂子は写経の手を止めて、しばらくその火を眺めたが、やがてその眼を猩々へ移した。

猩々は木もれの月光を受けて、雪の塊りでもあるかのように、黒い地面に浮き出ていたが、桂子の視線が向けられたと知るや、恭しく辞儀をした。

「卯ノ丸や、ここへおいで、ちょっとわたしのそばへおいで」

桂子はそう云って声をかけた。

彼女はそれが雪白であって卯の花のように見えるところから、卯ノ丸という名をつけて、長い間手もとに飼って置いたが、数年前に伏見街道横の、司馬の大藪地で他の獣と一緒に、放してやった猩々だということを、その猩々がそんなように、館の庭へあらわれた時から、その形によって感づいていた。

二十一日前に桂子は、写経の行を営むべく、この古館へ来たのであった。

「卯ノ丸や、どうしたのだえ、どうして側へ来ないのだえ」

また桂子は声をかけた。

と、また猩々は辞儀をしたが、そばへ来ようとはしなかった。