Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lisez 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) de 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 113 247 caractères · 229 écrans

Aozora Bunko

するとあの人はまるで田舎の村長さんの息子のように、だまって、無表情な顔をして、なんにも聞いていなかったようにきょとんとしていました。それでも実際はあの人の心の中には歓喜の嵐が吹いていたのです。妾にはよくそのことがわかりました。あの人の顔はいつでも感情が興奮してくればくるほど無表情になるんです。きっと顔の筋肉が痙攣を起こして動かなくなるんでしょう。それで妾は、あの人が、どう返事をしてよいかわからないでまごまごしていればいる程、あの人が可愛くなって、ほんとうに、真っ昼間でしたけれど、あの人の首に抱きついてやりました。ところがあの人はいつまでもそうしていてほしいくせに、唖ようにだまって、妾の手をふりほどこうとするのです。しかも力一ぱいなんですよ。

実際ちょっと見たところでは、あの人は、まるで神経をどっかへ落としてきた人のようでした。心臓のかわりに真鍮の塊でも胸の中へ入れているのじゃないかと思われるような人でした。あの人が、すばらしい経済学者で、あの人の論文を一つとるために、東京じゅうの雑誌記者が、信州の山奥までお百度をふんだなんて聞いても、妾には今だに、どうかすると信じられなくなるんです。