Classiques japonais avec furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lisez 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) de 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 113 247 caractères · 229 écrans
三
まだ戸締まりがしてないと見えて、木戸はちょっと押すと以前のようにすぐ開きました。萩の植え込みの中を分けて、一人は離れの縁側へ、一人は玄関へ回ってゆきました。
玄関の戸はがら開きになっていたので、乙刑事は、低声で、もしもしと呼んでみたが、家の中はしんと静まり返っていて誰も出てくる様子はありません。だんだん声を大きくしてゆき、とうとう板戸をどんどん叩きながら、
「誰もいないのか?」と怒鳴ったが、それでもまだ誰も出てくる様子はありません。それでいて、室の中には電灯は煌々と輝いているのです。
「評判の欲張り爺のくせに何という不用心なことだ」といまいましそうにつぶやきながら、乙刑事は座敷へ上がってゆきました。
玄関の右手が八畳の室になっています。これがこの家のおやじが、沢山の困った人間の生血を吸った部屋です。どうしたものか、玄関から、その部屋へ通ずる襖が二三寸開いています。乙刑事は、立ったままその隙間から中を覗いてみました。
乙刑事の瞳はみるみる拡大して、室内にある何物かに釘づけにされてしまいました。
三
部屋の中は、火事場のあとのように一面に紙の燃え屑がちらかっており、ほとんど部屋のまん中に、二尺に一尺位の大きさの手提金庫が開かれて、中には銀貨銅貨などが、ほぼ一列に底を覆う分量だけ残っていました。