Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lisez 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) de 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 113 247 caractères · 229 écrans

Aozora Bunko

それが実にあの人の最後であろうとは。妾は翌朝の新聞ではじめてそのことを知ったのでした。

もちろん、妾があの人の死に関係があろうなどとは今でも誰一人知っている者はありません。ただ妾だけが、あの人を殺したのは妾だということをはっきり知っているだけです。

あの記念すべき最後の夜、あの人は妾が何もかも思い切って逃げたと思ったのです。そして翌日妾の手紙を見て、あの人の想像の正しかったことが証明されたと考えたのです。その実妾はちっとも思いきっていたのではなく、あまりの激動に逆上してしまってあんな行為をとったのでしたが。是が非でもあの人と別れねばならんという考えと、どうしても別れることはできないという感情との葛藤が妾に何もかも忘れさせ、判断する力を奪ってしまったのです。このことを考えると今でも煮られるように妾は苦しくなります。

あの人は妾が去ればもう生きてゆく理由がなくなったのです。妾の去ったことによってできた穴は誰によっても埋めることのできないものだったのです。そのことを妾はどうしてあの時もっと深く考えなかったのでしょうか、ただあの人の家庭のことばかり考えて、あの人自身のことを、まるきり忘れてしまっていたのです。