Classiques japonais avec furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lisez 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) de 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 113 247 caractères · 229 écrans
「あなたはすぐ警官をよんできて下さい」と下田に言われて、安田はがたがたふるえながら、だまってかけ出した。
「お前は林さんを起こしておいで」と細君に命令しておいて、下田は上をむいて「柴田さーん」と大声で叫んだ。柴田の家の中からは返事がなかった。彼は、門の戸をあけようとしたが、内側から用心棒がしてあると見えて、どうしても開かぬのでどんどん戸を叩きながら、「柴田さん、大変です」と叫びつづけた。
一分もたってから、やっと、「どなたです?」という女の声が二階から聞こえた。
「大変ですよ。ご主人が」と彼はほとんど腹だたしそうに叫んだ。
やっとのことで、ばたんばたんと階子段を下りる跫音がきこえ、玄関のかきがねを外す音が聞こえて、やがて門の戸の用心棒をはずして、柴田の細君が出てきた。
彼女は、夫の死体を見ると、さすがに感動したものと見えて、「まあ」と一言言ったきり、棒だちになってふるえていた。が、気をとり乱すほどひどい衝撃を受けた様子はなく、どちらかと言うと、夫の死体をはじめて見た細君の態度としては冷静すぎると思われるくらいだった。
一方では下田の細君が、どんどん木戸を叩いて呼んでいるのに、林の家ではうんともすんとも返事がなかった。