Classiques japonais avec furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lisez 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) de 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 113 247 caractères · 229 écrans
「何でも東京で死んだちゅう話じゃから、わしもくわしいことはよう知らんが、肺病じゃちゅうこった。医者の死亡診断書もここへきとる」
「その診断書をちょっと拝見できませんか?」
「お易いこった」
彼は奥へ行って書類の綴じ込みをもってきて、その一番上の一枚を指し示した。
死亡の時という欄には昭和三年二月二十一日午後四時としてあった。死亡の場所という欄には、東京市××区××町××番地と書いてあって、死亡の原因という欄には「肺結核、心臓麻痺併発」としてあった。死亡者の氏名は、船井三郎すなわち私自身の姓名に相違なく、生年月日原籍等も私自身のそれと寸分もかわっていなかった。ただ現住所という欄が、死亡の場所と同番地になっていたが、それは私の一度も住んだことのない場所だった。診断した医師の名前は、死亡場所のすぐ近所の町に住んでいる、瀬越雄太郎となっていた。
「ははあ」と私は、私自身の死んだことを証明するこの奇怪な書類を見おわってから、狐につままれたような気もちで、しかも少なからず不快な気もちで皺枯れ声で言った。
「そうするとやっぱり船井君は死んだのかなあ、かわいそうに」
「遺骨もこないだ届きましたよ、ちゃんと壺へはいって、針金でしばって丈夫な箱へ入れてありました。