Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 187 841 caractères · 376 écrans
たものらしい。
しまった!
と、彼の投げた扇子は、同時に、総立ちとなった城将たちの足もとへ飛んで、それは、今まで忘れていた敵という観念を、はっきり藤吉郎のすがたに思い起させた。
「すわっ、寄手が」
「卑怯。虚を衝いたな」
満座の将士は、ふたつに分れた。一方はどッと外へ駈け出し、一部は藤吉郎のまわりを取りかこんで、忽ち、彼を無数の陣刀の下に斬りさいなんで、これから死にに出る血まつりにしようとした。
「だれが命じたッ。斬るなッ――その者を殺してはならん」
咄嗟、長政のおどろくべき大喝を、彼の家臣たちは、むしろ意外として、
「寄手の総がかりは始まりましたぞ」
と、喰ってかかるような顔してみな叫んだ。
答えもせず、長政は、
「小川伝四郎ッ」
と、さむらい達の中へ呼んだ。
「はッ」
と、返辞を聞くとまた、
「中島左近ッ」
と、呼びたてた。
ふたりとも、平常、彼の嫡子や姫たちに附いている傅役であった。
ふたりが、前へ出て平伏すると、長政はいよいよ早口に、次には藤掛三河守を近く呼び、
「三名して、夫人と幼児たちの身をまもり、木下藤吉郎を案内として、疾く、城外へ落ちのびよ。すぐ行けッ」