Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Lisez 新潮記 (しんちょうき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 155 541 caractères · 305 écrans
――兄のほうはもう長くは生きられないな、かれはひそかにそう思った。もし死んだら、あの娘はいったいどうするだろう、遺骸の始末、自分の身のふりかたをどうするだろう、いや捨ててはゆけない、かれはさらに心でつぶやいた。これを見捨ててゆくという法はない、早水にもそれはわかる筈だ、かれの用務がどんなものか知らないが、この頼りない娘を捨てていっていい道理はない、だって、こんな富士山へ登るような気まぐれをする暇があったんだからな。
食事が終って、大助があと始末を済ませると、しかしもう秀之進は出発の支度をしていた。冗談じゃないと大助は思った。おれはでかけはしないぞ……。
「いくぞ、大さん」
秀之進は笠をかぶってさっさと引戸のそとへ出ていった。大助は娘がじっとこちらを見ているのに気づいた。しかしやはり身支度をして笠を冠り、兄妹のほうへ挨拶をした。
「どうもお邪魔を致しました」
「……この吹雪に」
娘はそう云いかけて口をつぐんだ。その射止めるような、じっと見上げるまなざしが、縋りつきたい気持を表白しているもののように大助には思えた。
「お兄上は御病気のようにおみうけしますが、薬はお手許にお持ちですか、もしなんでしたら下からお届けさせてもよろしいと思いますが」