Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

Lisez 新潮記 (しんちょうき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 155 541 caractères · 305 écrans

Aozora Bunko

「婚礼の盃は、女から先だ、落ち着けよ大さん」

「いや、なにしろ」

大助は気があがっているので、三宝を持つ手が見えるほど震えていた。藤尾はしずかに盃を取った。盃は三たび、しずかに二人のあいだを往来した。このあいだ店のほうの物音はしずまり、庭へなだれ込む人の足音が、ばらばらとこの家のほうへ迫って来た。

「藤尾、これでおまえは早水秀之進の妻だ」かれは容を正して云った、「わたしのゆく道は改めて云うまでもあるまい、おまえも秀之進の妻であるからには、良人のゆく道を怖れはしない筈だ、いいか、なにごとがあっても怖れたり怯んだりしてはならんぞ……あとをたのむ、ゆくぞ大さん」

秀之進は立った。藤尾はすばやく大剣をとってさしだした。戸外には人の足音が入り乱れ「此処だ」「集まれ」という叫び声が闇を劈いて聞えた。秀之進は大剣を腰に差し、土間へ下りた。藤尾は手燭をさしかざしながら、大助はむしろ茫然として、酔ったように秀之進の動作をみまもるばかりだった。

かれは雨戸を明けた。戸口から洩れる手燭の光りがさっと前庭へながれ、二三人の人影がつぶてのように闇へとんだ、秀之進は外へ出ると、足を止めて空を仰いだ。