Classiques japonais avec furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Lisez 春いくたび (はるいくたび) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 70 094 caractères · 142 écrans
「まいるぞ。えーい!」
剛兵衛がわめいた。伝九郎は動かない。
「えーい、やあっ!」
「…………」
やはり伝九郎は目も動かさぬ。
「やあっ、おっ※(感嘆符二つ、1-8-75)」
三度目を叫ぶと、剛兵衛はふみだしざまぶうんとうちこんできた。すさまじい一撃、伝九郎は受けでもすることか、わずかに半身を反らして棒をかわすと、ひらり! つばめのように身をひるがえして相手の手もとへつけいる。
「や、えいッ!」
するどい気合いとともに、木剣が光のごとくひらめく、刹那! 刹那! 剛兵衛の棒がうなりを生じて、
「とう※(感嘆符二つ、1-8-75)」
と面上へくる。それよりはやく、伝九郎はぱっと三メートルばかりうしろへとびのいて、どうしたことか――いきなり木剣をかついでどんどん逃げだした。その逃げ足の速いこと、見ていた人はもちろん、剛兵衛もこれにはおどろいた。
「逃げるとは心得ぬ、返せ、もどせ」
どなりながら追いかける、広庭をぐるぐるまわって、やっとのことに追いつめると、伝九郎はにっこり笑いながら、
「まいった、手前の負けでござる」
といって木剣をおろした。
「な、なに、負けだ?」
剛兵衛はあきれたというように目をむくと、むちゅうで追いかけた疲れが一時に出て、息をはずませながら、どかっとしりもちをついた。