Classiques japonais avec furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 167 285 caractères · 330 écrans
宇乃は太息をつき、眼をほそめて、川の左右を眺めやり、それから低く、くすっと忍び笑いをもらした。おそらく、幼ない甲斐が、裸になって、その川瀬で遊んでいる姿でも想像したものであろう。低く忍び笑いをして、すると、頬のあたりが赤くなった。
「いちどこの川で、溺れかかったことがある」と甲斐が云った、「この少し上に淀みがあって、そこで釣っていたんだ」
「お友達と」
「いや独りだった」
宇乃は甲斐を見た。
「おじさまはいつもお独り」
甲斐はあいまいに首を振り、それから、ゆっくりと続けた。
二十年ほどまえの出水で流れが変り、その淀みがなくなって、此処にこの淵が出来たが、当時その淀みには広瀬川の主がいるといわれ、子供たちはみな近づくことを禁じられていた。甲斐はその「主」というのにひきつけられ、いちど見たいという、好奇心が抑えきれず、ひそかにそこへいって釣りをした。
「まあ、主を釣ろうとなさいましたの」
「いや、そうではない、釣りをすれば、主が怒って姿をあらわすだろう、と思ったのだ」
「まあこわいことを」
甲斐は唇で笑った。
三度めにいったとき、大きな魚が釣れた。浮子がくっと沈んだので、竿をあげると軽かった。