Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 136 062 caractères · 276 écrans
八
方へ引揚げて行きます。
八
ちょうどたそがれ時、人通りが絶えて、町家も水の上も、一様に雀色に見える頃でした。柳原の淋しい土手に掛ると、
「ちょいと、お神さん、しばらく待ってもらいたいね」
平次はたまらず声を掛けてしまいました。
「何だえ、気味が悪い、用というのは私にかい」
「そうだよ」
「気障な事をすると承知しないよ。憚りながら銀流しの、お六だよ」
相手の出ようを測り兼ねて、お六と名乗る女は夕闇をすかします。
「お六、御用ッ、神妙にせえ」
キラリと十手。
「あッ、お前は平次」
飛退くと、どうして肩から解いたか、重い荷物は草の上に落ちて、お六は柳を小楯に屹となります。
「お六、逃れぬところだ、観念してお縄を頂けッ」
「何をッ、銀流しのお六姐さんは、安岡っ引の手におえるような代物じゃねえ。下手にあがくと棘を刺すよ」
「黙れッ」
平次は飛込んで女の肩をハタと打ちました。
「あッ」
逃げようとする手首に絡んだのは、いつの間に掛けたか一条の捕縄。
「神妙にせえ」
これはお六が弱いのではなく、平次の手練があまりに鮮やかなためでした。宵の人足が、三人と立ち止らないうちに、銀流しの美女は銭形平次の手でキリキリと縛り上げられてしまったのです。