Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 136 062 caractères · 276 écrans
それは、お静が待っているといけないと思う、平次の心やりからでした。
三好屋の隠居は、止めるのも聞かずに、亥刻(十時)過ぎ急に思い立って帰ると言い出します。
「大丈夫、駒込へ出る前に駕籠を拾って行く、年は取ってもシャンとしているぞ」
そんな事を言いながら、茶人帽を阿弥陀に、足元危うく巣鴨の夜の闇へ出たのです。
平次は母屋の奥の一と間、八畳の贅を極めた部屋に、生れて初めての絹夜具に包まれて寝みました。有明の絹行灯は、少し艶かしく枕屏風の影を青畳に落して、馴れない平次には結構過ぎて寝心地が悪いくらい。
枕元の小机の上には、帛紗に包んで、お紋の父河村靱負の形見という短刀、――主君本多上野介が、東照権現様から頂いて、靱負に預けたままになったという、三つ葉葵の紋を散らした因縁付きの短刀――を置いて、何べんも寝返りを打ちながら、悩ましい眠りに落ちました。
お紋は慎み深く、それっきり姿を見せず、美しい女中達も遠く退って銘々の部屋へ入った様子、巣鴨の夜は、滅入るように、ただ深々と更けて行きます。
「野郎ッ」
平次はガバと起きました。
何やら魍魎が、自分の喉笛を狙っているのを、夢心地に気が付いたのです。