Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 142 597 caractères · 289 écrans
横木に少しの泥も付いてはいず、二本の脚が、柔かい土にメリ込んでもいず、梯子を掛けた竹の古い雨樋も、少しも傷んではいなかったのです。手代は、寝たまま喉を刺されて、夢から死への無慙な往生を遂げたらしく、凄まじい血潮の外には、何にも変ったものはありません。
「この泥棒には人間の心がない」
平次はツクヅクそう言いました。今までの手口から見て、無恥で、残酷で、手加減も遠慮もないところを見ると、どう斟酌して考えても、人間らしい心の持主とは思えなかったのです。
「隣は?」
「空家でございます」
「その隣は?」
「軽業の小屋で」
「行ってみよう、八」
平次はガラッ八をさし招くと、路地を拾って、軽業小屋の裏木戸から入りました。
「御免よ、――誰か居ないのかえ」
「ヘエ――」
ヌッと顔を出したのは、五十年配の人摺れのした男。平次とガラッ八の顔をまぶしそうに眺めます。
「ここに誰と誰が泊っているんだ」
「ヘエ――」
五十男の顔から、不敵な忿懣が消えると、それが次第に恐怖になって行く様子です。
「俺は神田の平次だ。朝早くから気の毒だが、ツイそこに人殺しがあったんだ。念のため小屋に泊っている男の顔を見ておきたい。