Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

Lisez 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 142 597 caractères · 289 écrans

Aozora Bunko

五

その時でした。急に街の空気が騒がしくなったと思う間もなく、

「親分、大変だッ――殺されましたよ」

下っ引の勝が飛んで来ました。鋳掛勝という中年男で、乾し固めたような小さい身体ですが、ガラッ八などよりは物事が敏捷に運びます。

「誰が殺されたんだ?」

「浪人者の妹ですよ、――お京さんといった、めっぽう綺麗なのが――」

「えッ」

平次は飛上がりました。岡っ引として異常な事件に臨む緊張というよりは、女の児が、美しい人形を取落して、微塵に砕いた時の心持です。

二人は宙を飛びました。皆川の浪宅では、

「お、平次殿」

さすがに、真っ蒼になった主人の半之丞が迎えてくれます。

「お妹様が御災難だそうで――」

「見てくれ、平次殿」

皆川半之丞の案内で裏へ廻ると、狭い庭の植込みの蔭に、さしも美しかったお京は、紅絹の一と束のように、碧血に染んでこと切れているのです。

「これは?」

平次もさすがに胸が塞がりました。血を失い尽して、真っ白になった小さい顔は、打ち砕かれた人形のような、この世のものとも見えぬ冷たく美しいものです。傷は後ろから浴衣越しに突いた一と太刀、左乳の下へ突き抜けるほどの凄まじいもの。