Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 109 804 caractères · 225 écrans
――俺はな、この伊勢屋新兵衛はな、お前がこんな姿になるのを、この眼で見たいばかりに、家も身上も失くしてしまった町内に、恥を忍んで踏み止まっていたんだぞ。――馬鹿なッ」
伊勢屋新兵衛は吐き出すように言い終って、線香をもう一と掴み燻らし、さて平次の方を振り返ってピョコリとお辞儀をするのです。
「伊勢屋、お前は泣いてるじゃないか、やはり悲しいのか」
平次はそれを迎えて言います。
「悲しい? 冗談でしょう、馬鹿馬鹿しくって、可笑しくって、涙が出ますよ」
「そうかなア」
「私はね、親分。この女のために、町内一番の身上をいけなくして、こんなざまになりました。みんな私の不心得から出たことで、身上なんざ、どうなったって構やしません、私一人が恥さえ忍べば、また稼いで溜める工夫もあります。ただね、親分、――」
「…………」
伊勢屋新兵衛はガックリ頭を下げると、またも黒く痩せた頬を、涙がハラハラと洗うのです。
「私の道楽を苦に病んで、死んでしまった女房が可哀想でなりません」
「…………」
「親分、私は、金や身上なんざどうなったって構やしません。女房さえ達者で生きていてくれたら、死んだ気になってまた稼ぎ溜め、元の伊勢屋の半分でも三分の一でも拵えて、あの――馬面の見っともない女房――そのくせ仏様のように気の良い女房に、安心をさせてやりたかった――