Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 114 139 caractères · 233 écrans
二
二人は顔見合せて笑いながら、もとの乱酒の席に還りました。ドッ、ドッと波打つ馬鹿騒ぎの間を縫って、ひょぐるような尺八の調べが、狭い庭を隔てた隣の長屋から、小止みもなく響いて来るのです。
それから四半刻(三十分)と経たぬうちに、事件は思わぬ大発展をしました。酒席の手のすいたとき、下女のお元は親分の床がまだ敷いてなかったことに気が付き、あたふたと廊下伝いに駆けて行きましたが、唐紙に手を掛けて、
「親分、お床を敷きましょう」
ひょいと覗くと仰天しました。
「あッ、た、大変ッ。誰かッ、誰か来て下さいッ」
ヘタヘタと敷居際に腰を抜かしたのも無理はありません。親分の溝口屋鐘五郎は、八畳の部屋一パイに浸す血潮の中に虚空を掴んで死んでいたのです。
二
騒ぎは一瞬にして宴楽の席に水をブッ掛けました。
「何だ何だ」
「何を騒ぐんだ」
ドカドカ雪崩込んだ子分たち、親分溝口屋鐘五郎が、紅に染んで縡切れた姿を見ると、さすがに乱酔の酒もさめてしまいます。
その間に頭立った子分は、血潮の中の鐘五郎を抱き起しました。傷はたった一ヶ所、後ろから左肩胛骨の下、心臓の真っただ中を貫いて、曲者の卑怯さは見る者を歯噛みさせますが、その代り声も立てずに死んだことでしょう。