Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 114 139 caractères · 233 écrans
銭形平次捕物控
一
一
「親分」
「何だ、八。大層あわてているじゃないか」
「天下の大事ですぜ、親分」
「大きく出やがったな。大久保彦左衛門様みたいな分別臭い顔をどこで仕入れて来たんだ」
銭形の平次はおどろく色もありません。八五郎のガラッ八と来ては、向柳原の叔母さんが無尽に当っても、隣の荒物屋の猫が五つ子を生んでも、天下の大事扱いにしかねないあわて者です。
「ね、親分。親分は近ごろ火事が多過ぎると思いやしませんか」
ガラッ八は妙なことを言い出しました。
「火事と女出入りは派手なほど良い――なんて罰の当ったことを言っていたのは誰だっけ」
「そんなことも言いましたが――この節のように火事が多くなると、火事と女出入りは地味なのに限りますね」
「馬鹿だなア――それでどうしたんだ」
「三年前(明暦三年正月十八、十九日)の丸山本妙寺の振袖火事から江戸は火事つづきじゃありませんか。二年前(万治元年)の本郷吉祥寺の火事、今年の正月の湯島天神門前の火事と、大きい火事だけでも三つ、その外小さい火事は毎晩だ。多い時は一と晩に五ヶ所八ヶ所もあるんだから、いくら火事が江戸の花だって、これじゃやりきれない」
「…………」