Classiques japonais avec furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lisez 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 271 caractères · 263 écrans
彼女は慌てて又もや座敷へ引返して、先ず有合う燐寸を我袂に入れた。更に見廻すと、床の間の傍には客の紙入が遺してあって、人はまだ誰も帰って来なかった。お葉は其紙入から札と銀貨を好加減に掴み出して、数えもせずに紙に包んだ。之を懐中に押込んで、彼女も裏木戸から駈け出した。
この時、塚田巡査を先に四五人の追手が裏口へ廻って来た。素足で雪の中を駈けて行くお葉の姿を不思議と見たのであろう、巡査は角燈を翳して呼び止めたが、お葉は聞かぬ振をして駈抜けて了った。
「変な奴ですな。」と、忠一が云った。
「あれは此の家のお葉という女ですが……。」と、云いながら巡査も考えた。不徳要領の為に一旦は釈放したものの、お葉は一件に就て何等かの関係ありげにも見ゆる女である。それが今この場合に雪中を跣足で駈歩くのは、何か仔細があるらしくも思われるので、巡査も職掌柄、直に其跡を追って行った。
夜の雪はますます烈しくなって来た。風も亦吹き募って来た。天から降る雪と地に敷く雪とが一つになって、真白な大浪小波が到る処に渦を巻いて狂った。其の凄じい吹雪の中を、お葉は傘も挿さずに夢中で駈けた。
「重さん……。