Classiques japonais avec furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lisez 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 271 caractères · 263 écrans
(三十八)
煩せえ。」
男は突放して又駈出そうとした。
「お前は俺の阿母さんを殺したのか。」と、重太郎は呶鳴った。
「そんなことは知らねえ。」
男は手暴く重太郎を突き退けると、彼は椿の枝を持ったままで地に倒れた。これで黙っている重太郎ではない、椿の枝を口に喞えて又跳ね起きた。此に忽ち掴み合が始まった、上になり下になり、互に転げて挑み争う中に、何方が先に足を滑らしたか知らず、二人は固く引組んだままで、傍の深い谷へ転げ墜ちた。
(三十八)
山椿の下では、お葉と重太郎との詩的な別離があった。窟の外では、重太郎と素性の知れぬ男との蛮的な格闘があった。こんな事件が続いてある間、市郎は暗い岩穴の底に取残されて、救いの人々の来るのを待っていた。
一本の蝋燭は漸次に燃え尽して、風なきに揺めく火の光は軈て其の消えんとするを示している。左したる重傷ではないと知りながらも、股と膝との疼痛は漸々に激しくなって来た。疲労と空腹とは愈よ我を悩して来た。
「七兵衛は何うしたろう。彼奴等も途に迷っているのか知ら。それにしても使の男が早く行着いて呉れば可いが……。一体、あの男は何者だろう。土地不案内の為に、これも途中で迷っていられた日には、何時まで経っても際限があるまい。