Classiques japonais avec furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lisez 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 271 caractères · 263 écrans
冬子も恨めしそうな眼をして、市郎の顔を視ていた。斯うなると、何だか聞捨にもならぬような意もするので、安行も稍や真面目になった。
「御承知の通り、倅もまだ書生上りで小児も同然だから、私も平生から厳しく監督していますが、冬子さんとの婚礼は昨日今日に初った話でも無し、たとい一月や二月延びたからと云って、決して間違いの起るなどと云うことは……。」
「それは然うですとも……。」と、お政は遮って、「ですから、妾の方でも決して心配は為ませんが……。それでもお若い方と云うものはね。」と、又笑った。
市郎も何だか黙ってはいられぬ羽目になった。
「じゃア、おばさん、私が何か不都合な事でも為ていると被仰るんですか。」
「別に不都合ということは無いのですけれど、他の噂を聞くと、市郎さんは此頃柳屋とか云う家にお馴染が出来たそうで……。皆なが然う云っていますよ。」
「へえー。」と、市郎は眼を丸くした。柳屋と聞いて、安行の眼も少しく晃った。
「嘘です、そりゃア実際嘘ですよ。」と、市郎は口早に、「そんなことは決してありませんよ。今も親父に話したのですけれども、此の夏、忠一君が帰省した時に、唯った一度行ったことが有るだけで、其後は柳屋の閾も跨いだ事は無いんです。