Classiques japonais avec furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lisez 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 271 caractères · 263 écrans
が、斯う見えたのも一瞬時で、燐寸の火は忽ち消えた。火が消えると同時に、彼は再び強くなった。地に落ちたる洋刃を手早く拾い取って、更に市郎に対って突いて来た。彼は闇中でも多少は物が見えるらしい。
市郎は透さず第二の燐寸を擦ると、彼は再び眼を掩った。彼は野獣に均しく、非常に火を恐るるらしい。市郎は勝つに乗って、続けさまに燐寸を擦ると、敵は既う此方を向く勇気が失せたらしく、頭を回らして一散に逃げ出した。市郎は何処までもと其後を追ったが、敵は非常に逃足が疾い。森を出抜ける頃には、既に十五六間も懸隔たって了った。
「畜生……到底駄目だ。」と、市郎は呟きながら引返して来ると、安行も丁度駈付けた。トムは咽喉を深く抉られて、既に息が絶えていた。
「可哀想な事を為ましたな。今の奴は何うも山※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)らしかったですよ。」
「そうか。」と、安行は低声で云った。
兎に角、愛犬を路傍に捨てては置かれぬので、市郎は血に染みたるトムの死骸を抱えて起った。
「市郎、衣類が汚れるぞ。」
「けれども、ここへ残して置くのは何だか不安心ですから……。