Classiques japonais avec furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lisez 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 271 caractères · 263 écrans
(二十)
怪しい者も同じく叫んで、後から続いて行こうとすると、忽ちお杉に叱られた。
「お前は彼方へ行ってお出よ。」
怪しい者は小さくなって、窟の奥へ逃げ込んで了った。お葉は茫然と立っていた。重太郎も黙って其顔や容に見惚れていた。
山風がどっと吹き下して、岩と岩との間を掻き廻すと、そこらに積っていた真赤な落葉は、さながら火粉を散らすが如くに、はらはらと乱れて飛んだ。
(二十)
お杉が去り、お葉が去った後の角川家は、所謂大風の吹いた後であった。塚田巡査も近所の人々も漸次に帰って了った。
冬子も一時は失神の態であったが、これも市郎の手当に因て回復して、南向の座敷に俯向いて坐っていた。傍には安行と市郎の二人が同く黙って坐っていた。
「冬子さん、何うだね。気分は既う悉皆快いのかね。」と、安行は霎時して口を切った。
「はあ、有難うございます。お庇さまで、もう悉皆快くなりました。」
とは云ったが、冬子の顔は未だ蒼ざめていた。市郎は心許なげに、
「ほんとうに既う快いんですか。まだ血色が不良いようだが……。何しろ、飛んだ災難でお気の毒でしたねえ。」
冬子は黙って俯向いていた。
「災難……実に飛んだ災難だったよ。