Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lisez 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 296 741 caractères · 584 écrans
恐らく二人にとれば、その刹那が、あらゆる力の無力を直感した瞬間であったろう。けれども、その法水が持ち出した、華やかに彩色濃く響の高い絵には、どうしても魅了せずにはおかない不思議な感覚があった。法水は静かに云った。
「虹……まさにそれは、革鞭のような虹でした。ですが、犯人を気取ってみたり、久我鎮子の衒学的な仮面を被けたりしている間は、それに遮られていて、あの虹を見ることが出来なかったのです。僕は心から苦難をきわめていた貴女の立場に御同情しますよ」
「では、久我さんの言を借りれば――動機変転。ねえ、そうでございましょう。でも、そんな隈取りは、もう既に洗い落してしまいましたわ。偽悪、衒学……そういう悪徳は、たしか、私には重過ぎる衣裳でしたわね」と第一日以来鬱積しきっていたものが、彼女の制御を跳ね越えて一時に放出された。伸子の身体がまるで小鹿のように弾み出して、両肱を水平に上げ、その拳を両耳の根につけて、それを左右に揺ぶりながら、喜悦に恍惚となった瞳で、彼女は宙になんという文字を書いていたことであろう。意外にも思いもよらなかった歓喜の訪れが、伸子をまったく狂気のようにしてしまったのである。