Classiques japonais avec furigana
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lisez 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 296 741 caractères · 584 écrans
その伸子の一言は、依然レヴェズの自殺の謎を解き得なかったばかりではなく、さらに法水へ呵責と慚愧を加え、彼の心の一隅に巣喰っている、永世の重荷をますます重からしめた。しかし法水は、ついにこの惨劇の神秘の帳を開き、あれほど不可能視されていた、帝王切開術に成功した。すでに、その時は夜の刻みが尽きていて、胸の釦に角燈を吊した小男が、門衛小屋から出掛けてきた。一つ二つ鶫が鳴きはじめ、やがて堡楼の彼方から、美しい歌心の湧き出ずにはいられない、曙がせり上ってくるのであった。法水は伸子と窓際に立って、パノラマのような眺望を、恍惚と味わっているうちに、彼女の肩に手を置き、無量の意味と愛着とを罩めて云った。
「伸子さん、既に嵐と急迫の時代は去りましたよ。この館も再び旧のとおりに、絢爛たるラテン詩と恋歌の世界に帰ることでしょう。ところで、ああして響尾蛇の牙は、すっかり抜いてしまったのですから、貴女は懼れず僕に、例の約束を実行して下さるでしょうね。もう、何も終って、新しい世界が始まるのですよ。この神秘的な事件の閉幕を、僕はこういうケルネルの詩で飾りたいのですがね。色は黄なる秋、夜の灯を過ぎれば紅き春の花とならん――」