Classiques japonais avec furigana
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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Lisez 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) de 正岡 容 (まさおかいるる) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 147 226 caractères · 295 écrans
「じゃ御機嫌よう皆さん、お達者で」
プラットホームに佇んだままニコニコ今松は、だんだん小さくなっていく汽車の姿を見送っていた。
が、ピーといっときは甲高い汽笛を最後に、目路の果てをその小さな汽車の尾が曲って消えていってしまったとき、
「…………」
はじめて今松は溜息を吐いた。
ただ東京へ帰るのが辛かっただけでハッキリ断ってしまったものの、ひと趣向にもふた趣向にも、じつはなんにもなかった。
懐中には今もらった五十銭玉二つの他に、ほんの少しの持ち合わせしかない。
知らぬ他国で、ほんとうのひとりぼっちになってしまって、さあどうしよう明日から。
昨日まで賑やかなうえにも賑やかだった宿屋暮らしだっただけに、まだ皆の笑い声のほとぼりの残っていそうな宿屋へ帰っていくことは、ひとしお墓穴へ入っていくような佗びしさを感じないわけにはゆかなかった。
ガランとした停車場を出てくると、真正面に聳え立っている赤煉瓦造りの大時計を斜めに秋燕が。秋の日が青磁の色に沈みかけていた。それが馬鹿に寂しく見えた。
ふっと目頭が熱くなってきた。その哀しみをごまかそうと辺りの人が肝を潰して振り向いて見たほど大きな声で、「ニヨロニヨロヒヤー」