Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
Lisez 妖虫 (ようちゅう) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 120 290 caractères · 239 écrans
事務員は今度こそ、心底からびっくりしないではいられなかった。
「蠍だ! 赤い蠍だ!」
しかも、並々の蠍ではない。千倍万倍に拡大して、人間程の大きさを持った、化け蠍であった。
タ、タ、タ、タ、……丁度その時、一人の足袋はだしの新聞配達夫が、うしろから走って来て、何の気もつかず、彼を追い抜いて行こうとした。
「オイ、君、ちょっと待ち給え」
事務員は配達夫を呼びとめて、さも恐ろしそうに、怪物の方を指して見せた。
「ワーッ、何だい、あれゃ?」
若い配達夫は、ギョッと立止って、臆病を隠すように、頓狂な声を揚げた。
「よく見給え。あれは蠍という毒虫の形をしているじゃないか」
「エッ、蠍ですって? アア、そうだ。真赤な蠍だ」
二人は脅えた目を見合せて黙ってしまった。彼等はこの頃世間を騒がせている、恐ろしい殺人鬼の紋章について、知り過ぎる程知っていたからである。
ふと見ると、Sビルディングの小使の爺さんが、何気なく入口に現われて、そこの石段を降りようとしている。
「いけない、おじさん、そこをごらん。変なものがいるぜ」
配達夫が大声に叫んだ。
小使は注意されて、ヒョイと目の前を見ると、びっくりして、いきなり入口の中へ二三歩逃げ込んで行ったが、やっと踏み止まって、遠くから及び腰に、怪物の姿をじっと眺めた。