Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lisez 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) de 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 113 247 caractères · 229 écrans

Aozora Bunko

「泥棒の顔はおぼえているか?」

検事はおやじのそばにすわりながらおだやかな調子できいた。

「手を……この手をほどいて下さい、旦那……あ痛っ……」

「いま手はほどいてやる、がその前に誰に縛られたのかきいておかなくちゃほどいてやるわけにゃいかん」

「知らん男です、一度も見たことのない、まだそいつはつかまらんのですか……大切な証文を、みんな灰にしてしまって……しかも、このわしの見てる眼の前で……ああくやしい……」

「お前の左のこめかみのところはどうしたんだ、紫色に腫れ上がっているじゃないか?」

検事は島田のこめかみを指しながらいった。

「野郎、おぼえておれ、恐ろしい力のある奴だ。あいつが、拳固で力一ぱいここをぶちやがったんです。それっきりわたしゃ何が何やらわからなくなってしまって……」

「手はどうしたんだ、ひどく火傷してるようだな、それからお前の手ににぎってるのは何だ?」

「は、はやく手をほどいて見せて下さい、何かにぎっとりますか、あ、ありがたい」

島田は狂気のように叫びながら自由のきかぬ手をしきりにふりほどこうとして藻掻きました。

検事と署長とが眼くばせすると二人の刑事が島田のそばへ寄って手をほどいてやりました。