Classiques japonais avec furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lisez 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) de 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 113 247 caractères · 229 écrans
私は一眼見て完全に綿のように征服された。はじめて富士山を見たときのような神々しさをさえ感じた。
雪子はというと、つい一分間前までの沈んだ態度とはがらりとかわって、はじめてあったときと同様の落ちつきをいつの間にか回復していた。そして私が、新来の客に対して抱いている感じをとうに見抜いて、それを満足しているようにすら思われた。
何しろ、私は、内閣総理大臣の前へ出たって、この瞬間ほど、自分を小さく感じはしなかっただろうと思う。
「この方は外務省の翻訳官をしていらっしゃる三浦さんです。……こちらは、妾のお友達の深尾みな子さんです……」
「はじめてお目にかかります」
「はじめて……」
と半分言うのがむろん私にはやっとやっとだった。何という有り得べかざる暗合だろう。深尾みな子? 深尾みな子といえば私の妻とまさに同姓同名ではないか、いったい今日という日は何という日だろう。電車の中では、妻にそっくりな女にあう。そしてその女は明らかにこのホテルの入口をくぐったはずだ。そうかと思うと、ホテルの中には、妻と同姓同名の女が、現に私の前にすわっているではないか。
「妙なことを申しますが、私は、あなたと苗字も名前も同じ女を知っていますよ」