Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lisez 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) de 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 113 247 caractères · 229 écrans

Aozora Bunko

「はい、あの人が出てゆくとすぐに戸締まりをして私は二階へあがってやすみました」

「それから何か物音をきかなかったか?」

「すこしもききませんでした。十一時頃まで眼をさましていたのですけれど」

「昨夜は誰か来客はなかったか?」

この問いに対して彼女は、しばらく答えるのを躊躇していたが、やがて、

「いいえ、どなたも……」

と少し顔を赧らめながら答えた。

「きっと左様か、誰か来たのではないか?」

と検事は彼女の顔色を見て、すかさず追及した。彼女が哀願するように眼をあげてちらっと四辺を見まわした時、林が横から口を出した。

「私が昨夜まいりました」

「いま林が昨晩お前の家へ行ったと言っているがほんとうか?」

と検事は再び未亡人の方へ向きなおってたずねた。未亡人は低い声で「はい」と肯定した。

「何のために林は被害者の家をたずねたのか?」

彼女はまた返事に窮してだまってしまった。すると、林が再び横合から、

「それは私から申し上げましょう」

と言ったので、検事は、こん度は林の方へ向き直って、訊問をつづけた。

「被害者と、この奥さんとの間に、昨晩ひどい喧嘩がありました。私の家へはそれが手にとるように聞こえるのです。