Classiques japonais avec furigana
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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
Lisez 復員殺人事件 (ふくいんさつじんじけん) de Sakaguchi Ango (坂口 安吾) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 96 621 caractères · 195 écrans
「よし、じゃア、オレの見ている前で、今、汲んでみろ。汲めなかったら、キサマ、どうする」
「クビをやる」
久七も額にビク/\と青筋を立てた。井戸の横手に塀の修繕に用いて余った大谷石が積まれていた。久七は、その石をかついできて、ドカン、ドカン、井戸へ投げ落した。井戸といっても、撒水専門の底の浅い水溜めのようなものであったから、やがて石でいっぱいになり、水が溢れてしまった。そして久七は、ジロリと公一を睨んで、何も言わず立ち去った。
もっとも、その夜の一晩の中に、久七は、ひとり、井戸へもぐって、投げ落した石をみんな持ち出して、元の通りにつみ重ねた。投げ落すのと違って、一つ十五貫もある石を担ぎだすのは大仕事であったが、彼は翌朝、疲れた色も見せなかった。
昭和十七年一月末、公一父子が惨死する前日に、この一族と公一と、又しても、猛烈な争論を起した。
便所から出てきた久七が、非常にていねいに手を洗っているのを、公一が見咎めたのである。公一はツカ/\歩みよって、その手をかいだ。
「アッ、キサマ」
公一は奇怪な発見に度を失って、顔色を変えた。
「キサマは、ケツを、手の指でふいたな」