Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 187 841 caractères · 376 écrans

Aozora Bunko

わたくし如きは、お見捨て下さって、すこしも早くお退きなされますように」

と、いうたかと思うと、もう身を翻して、敵の中へ駈けて行った。

死を決して奮進した采女は、奪われた味方の馬標を敵の手から奪りかえし、しかも後日、身をもって危地から遁れてかえった。

この引揚げが、いかに至難であったかは、勝家と共に殿軍した氏家卜全が戦死し、安藤伊賀守も潰え、将士の戦死八百余人、負傷二千余名と数えられたことを見ても、その犠牲のほども想像されよう。

――が、信長は、ようやく岐阜へ近づくと、

「まず、よかった」

と、つぶやいた。そして乗れる愛馬の平首を叩いて、

「もう一年の辛抱だ。ほんとに汝の駿足を労すことは、一年の後にある」

と、独り云った。

一死ただこれ君命あるのみと、敵中へ馳せもどって、金幣の馬標をとりかえして来た少年水野の如きは、退却に際しても、何の理窟もこねなかったが、諸将のうちには、岐阜帰着後も、こんどの引揚げと、その犠牲に対して、信長への批判や懐疑がひそかに絶えなかった。

それに対して、信長は一日、群臣のいるところでこういった。

「わしには――わが織田軍には、前途多くの任務が横たわっている。