Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 187 841 caractères · 376 écrans
「……たのむぞ、木下」
長政は、杯をとって、じかに彼のほうへさし向けた。
「慥と、たのまれましてござります」
杯をうけて、それといっしょに彼はもう一度云った。
「……御安心を」と。
「うむ」
長政は、満足そうだった。藤吉郎は、敢えて、お市の方と、信長の名には触れなかった。
その美しくて若い御方と、幼い姫たちは、かたわらに繞らした金屏風のうちに、可憐なかきつばたの花が、池の汀に群れ咲いているように、かたまり合っていた。
藤吉郎は、そこの銀燭のまたたきをちらと、眼のすみから見た。
さすがに、正視に堪えなかったのであろう。
つつしんで杯を長政の手へかえしてから、
「かかるあいだは、敵も味方もございますまい。さむらい集いの御酒をいただいたからに、小舞をひとつ、お眼にかけとう存ずる。おゆるし下さいましょうか」
「なに、舞うとか」
長政ばかりでない、人々みな眼をみはった。
胆斗の如し――ということばもあるが、この男の、何と身なりも小さいくせにと、やや気をのまれたかたちであった。
雛鳥を庇う母鳥のように、お市の方は、子たちをみな膝に抱えて、
「怖うない、怖がることはない。