Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 187 841 caractères · 376 écrans

Aozora Bunko

虎御前山の陣地から、北の上山田のほうまで本営をすすめて、信長は、面を焼くばかり近い小谷の落城の火を、じっと見まもっていた。

三面の山、谷間、みな赤い。

城は、巨大な熔鉱炉のように、雄たけびの沸りをあげている。――その火花がやがて黒ずんで来て弱まる時、すべてのことは終るのかと思うと、信長は、

「……ばかなやつ」

と、妹の運命を、哭かずにいられなかった。

比叡全山の伽藍仏塔も、僧俗のおびただしい生命も、火中に見て、冷然たるものだった信長の眼に、いまは涙がある。

比叡の殺戮とは、くらべものにならない、たった一人の妹のために。

知性と本能と、ふたつを持つ人間には、だれにも矛盾はある。

だが、信長とすれば、比叡の焼討ちには、大きな信念があった。あれだけの生命をころすには、あれ以上、無数な世の生命に、のちのちまでの幸福を誓いうるだけの信念を持っていたのである。要するに、大乗の精神をもってしたのだ。

浅井長政にたいしては、なんらそういう大意義がなかった。長政が、小乗的な義理や感情で戦ったと同じように、信長の戦いも、小乗的にならざるを得なかった。長政さえ、小義をすてて、信長の大義を解してくれたらよかったと、信長からはいえるのであろう。