Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 187 841 caractères · 376 écrans
と、いうようなことだった。
老母も眼をほそめて、
「そうか。そうかいの……」
と、さも欣しげに聞き入った。
およそ名将といわれるほどな人物は、麾下の将士の心服をうけているばかりでなく、個々の将士の家族たちからも、頼もしい親柱として慕われもし尊敬をうけていたようである。もっともそれくらいな景仰をあつめていなければ、それらの最愛な良人や、ふたりとない子を、自分の馬前で死を競わせることはできなかったに違いない。それもただ華やかに散るだけでなく、死ぬ者も、あとに残る者も、ともにそれを歓びとし、誇りとしたことを見ても、将たる人の平素には、戦略や政治以外にも、なみならぬ心がけを要したであろうと思いやられる。
民衆の杞憂を知らない、また世間や人間を知らない、いわゆるお大名とか殿様なるものは、まったく泰平の永きに狎れた末期の子孫のことで、信長の時代、実力がすべてを決した戦国の世では、そんな特殊人の存在はゆるされなかった。義昭でも義景でも、また今川義元のごときでさえも、位置や名門に晏如としていれば、たちまち時代の怒濤が覆して行った。
だからこの時代に立つ一方の大将たる資格には、高い教養と位置と権力のほかに、庶民の実体がよく分っている者でなければならなかった。