Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 176 911 caractères · 353 écrans
……てまえも大働きをやッた後、ゆるりと、都見物のひとつもしたいし……」
峠の上の程よい地点に腰をおろして、三蔵はしきりに於通の意をむかえた。自分はあともう一役果すために、これから麓の街道に出て、池田勢の来るのを待つ。――そして明朝卯の刻までには、必ずここへ引っ返して来るから、そこの御堂の縁にでも寝て待っていてくれというものである。
於通の眉は惑っていない。といって、彼のことば通りを正味にうけて、自分の夢に酔っているふうでもない。やや冷たいがいつも理性と賢い判断を伴のうている美しい眼、それが彼女の心のさざ波を映じている。
「ええ……。待っています」
と、うなずいた。そのしおに、三蔵はすぐ立って、山神堂か何かの古い廂の下へ彼女を伴い、またくれぐれもここから居場所を変えないようにと念を押した。
「や、だいぶ更けて来たようだ。こいつあおもわず少し時刻を過ごしたかも知れねえ。じゃあ、よござんすか於通さま。約束をたがえると三蔵は一生お恨みしますぜ。きっとお待ちなすって下さいよ、あしたの朝まで」
そこを離れると、三蔵の脚は、まるで宙を飛ぶようだった。
ふもとの野一色から各務ヶ原へ出、西から東へまっ直に貫いている犬山街道を、とつこうつ、眺め渡した。