Classiques japonais avec furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lisez 新生 (しんせい) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 334 815 caractères · 663 écrans
百十二
こうした心づかいも、よくよく不幸な節子のような姪がこの世に生きながらえていると思うことをどうすることも出来なかった。その悩ましさは、折角リモオジュの田舎の方で回復した新しい旅の心に掩い冠さって来た。
百十二
濃い霧で町の空も暗い日が続いた。時としては町々の屋根に近い空の一部に淡黄な光のほのめきを望み、時としてはめずらしく明るく開けた空に桃色の雲の群を望むような日があっても、復た復た暗く閉じ籠められた心持で暮しがちであった。戦時の寂しい冬らしく万物は皆な凍り果てた。寒い雨の来る晩なぞは、岸本は遠く離れている友人等の名前を呼んで見たいと思うことすら有った。彼は東京の加賀町の友人から絵葉書のはしに書いてよこしてくれた「寂寞懐レ君」という言葉なぞを胸に浮べながら、窓に行って眺めた。
六頭の馬に挽かれた砲車の列が丁度その町を通った。一砲車毎に弾薬の函を載せた車が八頭の馬に挽かれてその後から続いた。街路に立って見る市民の中には一語熱狂した叫び声を発するものもなかった。いずれも皆静粛な沈黙を守って馬上の壮丁を見送るもののみであった。戦時の空気はそれほど濃い沈鬱なものと成って来ていた。