Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

Lisez 春いくたび (はるいくたび) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 70 094 caractères · 142 écrans

Aozora Bunko

少女は思うことが口に出ないので、もどかしそうに肩を縮めながら云った、「ですから若しも、御出世をなさらなくとも、若しも戦で怪我をなすったり、それからもっと色々の、帰り悪いような事が出来ても、きっと、きっと帰っていらっしてね」

「斯うして、……約束します」

少年は片手で刀の柄を叩いた。少女は微笑もうとしたが、それは泣くよりもみじめな表情であった。……別れる時が来たのである、香苗は辛夷の花を一輪折り取った。

「庭の辛夷よ、帰っていらっしゃる時まで持っていてね、香苗も一輪、――大切に持っているわ、そしてこんどお眼にかかる時には、二人でこの花を出し合って見るの」

「有難う、大切に納って置くよ」

「そしてその花があなたをいつも護りますように」

信之助はよその方を見ながら懐紙を出して花を包んだ。

香苗はもっとなにか云いたい風情だった。言葉は胸いっぱいに溢れている、けれどこんどはなにか云えば泣きだしそうだった、それでぎゅっと唇を噛みしめていた。

信之助は去った。

濃霧が直ぐに彼の姿を押包み、嘘のようにかき消してしまった。……香苗は同じ処に立ってながいこと待った、信之助がなにか云い忘れたことを思い出して、戻って来るかも知れない、もういちど別れの言葉を呼びかけるかも知れない。