Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lisez 次郎物語 (じろうものがたり) de 下村 湖人 (しもむらこじん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 159 223 caractères · 320 écrans

Aozora Bunko

そして次郎の指を、一本一本こじ起こしにかかった。

と、次郎は、やにわに両足で土を蹴って、自分の上半身を、わざと橋の縁からつき出した。

重心は失われた。次郎の体は、さかさに落ちて行った。着物の裾を握られた二人が、そのあとにつづいた。水草と菱の新芽とが、散々にみだれて、しぶきをあげ、渦を巻いた。

橋の上では恭一と真智子と次郎の仲間たちとが、一列に並んで、青い顔をして下をのぞいた。

三人共すぐ浮き上った。最初に岸にはい上ったのは次郎であった。着物の裾がぴったりと足に巻きついて、雫を垂らしている。彼は、顔にくっついた水草を払いのけながら、あとからはい上って来る二人を、用心深く立って見ていた。

すぶ濡れになった三人は、芦の若芽の中で、しばらく睨みあっていたが、もうどちらも手を出そうとはしなかった。

「覚えてろ。」

相手の一人がそう言って土堤を上った。もう一人は默ってそのあとに蹤いた。次郎は二人を見送ったあとで、裸になって一人で着物を搾りはじめた。

「みんなで搾ろうや。」

仲間たちがぞろぞろと岸に下りて来た。恭一と真智子は、しょんぼりと道に立っていた。

次郎は、搾った着物を帯でくくって肩にかつぐと、裸のまま、みんなの先頭に立って、軍歌をうたいながらかえって行った。