Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lisez 次郎物語 (じろうものがたり) de 下村 湖人 (しもむらこじん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 159 223 caractères · 320 écrans

Aozora Bunko

入棺が終ると、彼は、何もかも最後だという気がして、急に力がぬけた。彼はもう何も見たくなくなった。真暗なところに一人でいたいような気がした。で、そっと座を立って庭におりた。木立をくぐって築山のうしろまで行くと、そこから星空が広々と仰がれた。彼は、かつてお祖父さんに教わった北極星、――「いつまでも動かない星」――をその中に見出した。彼は一心にそれを見つめた。見つめているうちに、その光は次第にうるんだ母の眼の輝きに似て来た。そして母の顔全体が、いつの間にかその周囲にはっきりとあらわれた。お浜の顔がおりおりそれにかさなった。同時に、彼の頭の中には、校番室以来の彼の記憶が、つぎつぎに絵巻物のように繰りひろげられはじめた。

だが、この時彼の心を支配したものは、悲しみでも憤りでもなかった。彼の心はふしぎに静かだった。

彼は、「運命」によって影を与えられ、「愛」によって不死の水を注がれ、そして「永遠」に向かって流れて行く人生の相を、彼の幼ない智恵の中に、そろそろと刻みはじめていたのである。

「次郎物語」は一先ずここで終る。しかし、次郎の一生がそれと同時に終りを告げたわけではむろんない。