Classiques japonais avec furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lisez 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 577 271 caractères · 1141 écrans
と、舌打ちして、その残念さをくり返しているのは、尤もな理由のあることで、国元の尾張城からこの江戸屋敷へ移ってきて以来、彼が心ひそかに探っている目標がその切支丹屋敷であったのです。
同じ剣工の鞴から生まれる刀にしても、その紋流や切れ味や鉄質までが、あながち同一でないように、鋳型にハメた大名の子にも、時には、飛んでもない異端者があらわれます。
万太郎はまずその方で、甚だしくお大名の素質に欠けている。安逸が嫌いで波瀾をこのむ、ぼんやりと物を見流さないで探奇心の目が光る。軽快であるはいいが争気が強い。長袖の風俗をきらって市井風の紺足袋をはくなど、すべて六十万石三家尾州の若殿としては軽すぎる。
けれど、またかれの性格がこうのびたのも、あまりな当時の大名生活の退屈さが助成したのかも分りません。
とにかく、そういう万太郎である。ところがその万太郎に、皮肉にも、また大きな猟奇心をあおるものが現れました。何かと言うと、去年、尾張城の書庫の整理の際に、邪宗門にかかわるものすべてを焼いた中に、偶然、かれの目についた、一通の古書。
「御刑罪ばてれん口書」
です。それは前々代、大納言義直卿の当時、名古屋の城下でとらえた一人の宣教師を斬った時、白洲で調べあげた写しで、てんぐじょうの厚紙十枚綴じばかりのもの。